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ヨセフは正しい人だったので、マリアが身ごもっているのを知って、何よりもまず
、マリアをよくないうわさから守ろうと思い、ひそかに婚約を解消することを考え
た。


しかしひとりの天使が彼のもとにやって来ていった。「恐れずに、マリアを妻に
迎えなさい。マリアはこの子を、聖霊によって身ごもったのである。彼女は男の
子を産むだろう。その子をイエスと名づけなさい」


まもなく、ヨセフとマリアは結婚した。そのころ、アウグストゥス帝が、帝国全土
の住民の人口調査をせよとの命令を出した。そこで人々は、住民登録のために
生まれ故郷の町へと旅立っていった。ヨセフは出産の近いマリアとともに、ユダ
ヤ地方のベツレヘムへ向かった。


ふたりがようやくベツレヘムに着くと、町にはおおぜいの人が集まっていた。通り
には人があふれ、宿屋も下宿屋もすでに満員だった。赤ん坊の誕生が近いの
を見て、ヨセフは心配して宿を探し回ったが、どこにも泊まる場所を見つけるこ
とはできなかった。長旅に疲れはてたふたりは、わずかに雨露をしのげるだけ
の場所を見つけ、そしてそこで、夜のうちにマリアに男の子が産まれた。マリア
は習わしに従って、麻布の帯で赤ん坊をくるみ、家畜たちがえさを食べる飼い葉
おけに、そっと横たえた。それ以外、赤ん坊を寝かせるところがなかったのであ
る。


        
           *おとなと子どものための聖書物語/フレーベル館*



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